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「まぁいい。とにかく食べなさい」
「……いただきます」
ふくれっ面ではあるけれど、俺の作ったおにぎりを食べてくれているし、どうやら結婚式を中止にするなんて事は言いそうもない。
それに若干ホッとしながら俺もおにぎりを口に入れた。
身よりのない葉月だけに花嫁の家族への挨拶とかそういうことはないけれど。
タクシーに二人で乗り込んで式場へと向かう間も、彼女は俺と視線を合わせないように窓の外に流れる景色をぼんやりと眺めている。
けれど一晩俺も冷静になって考えてみて、ひとつだけ言えるのは俺がこの先の人生を共に歩みたいのは葉月だけだ。
彼女が望む幸せと俺が望むものは今はお互いがうまく言葉に出来ないけれど、これからたくさん時間を掛けて分かり合えるようになればいい。
そんなことを思いながら俺も窓の外に流れる景色を見つめていた。
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