第7章:『犯人はあなたです』

10/10
前へ
/17ページ
次へ
 十真が果てしない闇の色をした双眸で、言ったーーとき、 「うぉおおおおおおお!!」  追い詰められた森は、激昂し、床に落ちていたハサミを持って、猛然と突進してきた。  十真がいる方向へ。    喜納が叫ぶ。 「彷徨!!」  初めて、その名前を呼んだ。  十真は動かない。  だが、怯えて竦んでいるわけではなかった。  刹那、空気を切る音がした。  ダンッ!!  一瞬のことだった。  十真がハサミの切っ先を避けたかと思うと、森の身体が床に叩きつけられた。  今のは何だ。喜納は呆然となった。 (まさか……合気道?)  十真が荒い息をつき、しゃがみ込んで、森の顔を覗き込んだ。 「あなたは、ただ娘さんのことを心配しただけなんでしょう」  静かな声だった。  静かな目だった。  その静謐さの前に、喜納も森も言葉を失った。 「娘さんを想うなら、潔く罪を認めて、自分のやったことの責任をとってください。  ーー大人なんでしょう?」  小学生(こども)のその言葉に、心動かされたのかどうか。  森は、おとなしく連行された。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加