第8章:『七色のお菓子』

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 リアルに想像できる。  夜明け前に、突然鳴り響く電話。  それに出た娘。  偶然、会話を立ち聞きしてしまった父親。  父親は以前から不安だった。  教師との恋に、娘は傷つかないのだろうか。  けれどそれも娘が決めたことなら、と考えていた。あきらめていた。納得していた。  なのに、相手の教師は、罪を犯したあげく、共に逃げようと娘を誘ってきた。  幸せになれるはずの無い道を、娘に選ばせようとしていたーー。 「……なんか」  喜納はタバコをくわえ、 「お前とだと、小学生と話しているって気にならねぇな」  と、感心したように皮肉った。 「受け売りですよ」  そう言って、十真は端正な顔に微笑を浮かべた。  初めて見るその笑顔に、喜納もつられて笑った。
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