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「犯人がわかった!?」
喜納の驚嘆に、十真はうなずいた。
「これから、犯人に会いにいきます。一緒に来てくださいますか?」
当たり前だろ、と言いそうになって、ふと疑問に思った。
「……容疑者全員を集めるとかは……?」
「え?」
「いや、パターンだろ。一堂に会して、『犯人はこの中にいる!』とか」
「推理小説の読み過ぎです」
十真は目を背け、軽くため息をついた。
きれいな瞳が、少し冷えた目線を向ける。
「……真実を知りたくない人もいるし、犯人だって、知ってほしくない人がいるかもしれませんし、それに」
「それに?」
「僕も、大勢の前で推理を披露するのは、苦手ですから」
十真は小声で付け加えた。
喜納は不思議そうに頭をひねる。
あまり腑に落ちなかったが、だが今は、もっと重要なことがある。
「それで、いったい誰なんだ?」
「これから順に解き明かします」
十真は捜査資料の中の、校内地図を手に取った。
さっと目を通し、喜納を促した。
「ついてきてください」
(もう覚えたのか!?)
驚く喜納を後目に、十真は一寸の迷いも無く歩き出した。
目的地へ。
犯人のいる場所に。
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