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「先ほどの話から察するに、宮脇先生は明け方のドライブ……たぶん、コンビニかどこかからの帰りだったのでしょうけど、その中途で人を轢いてしまった。
雨が降っていて視界が悪く、故意ではなく事故だったけど、気が動転した宮脇先生は、その場から離れることに全力をそそいだ。
これが悪かった。
逃げたら、罪は重くなります」
それは確かにそうだ、と喜納は思った。
「状況を考えれば、過失ってことになると思うんだが」
「冷静でいられなかったんだと思います。
部活動の打ち合わせのために、朝の七時から生徒を呼びつけることといい、宮脇先生は慎重すぎて、ちょっと小心なところがある人だったのかもしれません」
生前の宮脇の顔を、喜納は思い浮かべる。
モミアゲにばかり気を取られていたが、顔立ち自体は薄味で、確かに『剛胆』や『豪快』からは遠そうな男だった。
モミアゲは彼にとって、『体育教師の宮脇』になれる仮面だったのかもしれない、と思った。
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