第7章:『犯人はあなたです』

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「そして彼は『自分』を切り離したあと、犯人に殺害された」 「ちょ、ちょっと待て。モミアゲの件はわかったが、肝心の犯人は?」  十真が曲がり角を早歩きで曲がる。  校内地図を頭に入れていない喜納は、未だにどこに向かっているのかわかっていなかった。 「それも簡単なことです」  喜納が目をぱちくりさせる。 「凶器は、その場にあったトロフィー。  しかも、出血を抑えるための布も巻かれておらず、刹那の激情に任せての突発的犯行だということは明々白々」 「まさか犯人は……持ち主の大東か!?」 「違います」  喜納の渾身の一声を、十真はあっさりと否定した。  がくっと喜納の膝が崩れかける。しかし、刑事の意地でコケるのはとどまった。 「刑事さんがおっしゃっていたじゃないですか。  トロフィーはホコリまみれで、持ち主と被害者本人の古い指紋以外残っていなかったって。  つまり、犯人はトロフィーを拭わなかった。  なのに、指紋を残さなかった」  ここまで言われれば、さすがの喜納にも理解できた。  ……いつのまにか、目的地に到着した。  この部屋に。  この扉の向こうに、……いる。 「犯人は常に手袋をつけている。  つけていても不自然じゃない、  むしろ当たり前な人物」  十真が扉に手をかけた。  学校の敷地の隅にある、小さな貸家の扉を。  『警備員室』と書かれたプレートと、犯人の名前が記されてある表札が掲げられていた。  喜納の脳裏に浮かぶ、『彼』の姿。  薄くなった頭髪を撫でる、軍手をはめた手。  カーキ色のツナギの……。
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