0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「そして彼は『自分』を切り離したあと、犯人に殺害された」
「ちょ、ちょっと待て。モミアゲの件はわかったが、肝心の犯人は?」
十真が曲がり角を早歩きで曲がる。
校内地図を頭に入れていない喜納は、未だにどこに向かっているのかわかっていなかった。
「それも簡単なことです」
喜納が目をぱちくりさせる。
「凶器は、その場にあったトロフィー。
しかも、出血を抑えるための布も巻かれておらず、刹那の激情に任せての突発的犯行だということは明々白々」
「まさか犯人は……持ち主の大東か!?」
「違います」
喜納の渾身の一声を、十真はあっさりと否定した。
がくっと喜納の膝が崩れかける。しかし、刑事の意地でコケるのはとどまった。
「刑事さんがおっしゃっていたじゃないですか。
トロフィーはホコリまみれで、持ち主と被害者本人の古い指紋以外残っていなかったって。
つまり、犯人はトロフィーを拭わなかった。
なのに、指紋を残さなかった」
ここまで言われれば、さすがの喜納にも理解できた。
……いつのまにか、目的地に到着した。
この部屋に。
この扉の向こうに、……いる。
「犯人は常に手袋をつけている。
つけていても不自然じゃない、
むしろ当たり前な人物」
十真が扉に手をかけた。
学校の敷地の隅にある、小さな貸家の扉を。
『警備員室』と書かれたプレートと、犯人の名前が記されてある表札が掲げられていた。
喜納の脳裏に浮かぶ、『彼』の姿。
薄くなった頭髪を撫でる、軍手をはめた手。
カーキ色のツナギの……。
最初のコメントを投稿しよう!