第1章

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確かに乗車時間は長いけど、1人でゆっくり本を読んでる方が気楽なんだけど… そんなことを思いながら、田中くんのことが脳裏に浮かぶ。 まだ幼さの残る可愛い顔をしていた。あのまま続いていたら… もしかしたら付き合っていたのかな。 田中くんと付き合うことを色々言われるような気がして、続ける勇気がなかった。 田中くん…どうしてるんだろう 「田中くんとは連絡をとっているの?」 「ああ、夏休みに会ったよ。 気になる?」 「…ま、まあ」 「元気だよ。あいつ、可愛い顔をしてるだろ? 高校でも人気があるんだって。」 「そうなんだ。」 忘れていたはずなのに… 胸がキュッと締め付けられた。 自分から付き合いを止めてしまったのに… 何で胸が痛むんだろう? 「気になるってことは… もしかして好き?。」 「そ、そんなこと…」 一気に顔が熱くなる。今きっと真っ赤だ。 熱い頬に手を当ててた。 二重の目を細めてイタズラっぽく笑う高村くん。 あまり顔を見ないで話していたけど、よく見ると整った顔をしてるんだ… いつもは長く感じる駅から高校までの通学路。高村くんと話をしてるとあっという間だった。 「もう着いたな。 またな。」 「うん。」 爽やかな笑顔を残して高村くんは生徒玄関に消えていった。それを見送って自分の下駄箱に向かった。
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