第1章

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お母さんが亡くなってたった一年で結婚? それって… 胸がキュッと締め付けるように痛んだ。 高村くんの表情で分かってしまった。 きっと… お母さんの亡くなる前から、お父さんはその結婚する人と付き合っていた。 酷い 酷すぎる 「既に子供もいるらしい。 母親が病気で苦しんでたのにアイツは女とイチャついてたんだ。 そんな奴らと同じ家に住むなんて、まっ平ごめんだ。」 高村くんの気持ちが伝わったように胸が痛む。 胸が苦しくて言葉が出ない。 高村くんは16才でそんな苦しい思いをしているんだ。 母親が亡くなっただけでも辛いのに、頼りの父親に裏切られて、どんなに苦しくて辛い思いでいるんだろう。 平凡だけど仲のいい両親の元、ヌクヌクとしている私には、彼の気持ちを測り知ることができない。 そんな私が何かを言ったら、高村くんの気持ちを逆撫でしそうに思えた。 「ごめんごめん、余計なことだった。今の話は忘れて。」 冷たい表情が消え、また今までの高村くんの笑顔に変わった。 その笑顔の裏には冷たい顔が隠れてることを知って、戸惑いが消えなくて頭をフルフルとふるだけだった。 それから高村くんの心の痛みが伝わってくるように、胸が苦しくてしかたなかった。 家の最寄り駅に着くまで、二人とも言葉を失ったように、ずっと景色を眺めていた。
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