第1章

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家に帰っても高村くんの話が甦り、母が元気なことに感謝したり、呑気な父の存在に幸せを感じた。 今まで当たり前だった生活が実は幸せなことを、人の不幸な話を聞いて分かるなんて…なんて愚かなんだろう。 高村くんがこれから苦しまないように、願わずにいられなかった。 次の日… 電車に乗り込むと、座席に座る高村くんを見つけた。 「おはよ。どこから乗ってるの?」 「上井駅、三つ手前の駅だよ。」 「そうなんだ。」 「田中の家も近いんだ。」 「へー。」 「幼稚園から一緒だったから、お互いの家にも行き来してたんだ。」 「そうなの。」 「母親が亡くなってからあまりいかなくなって…田中も遠慮して来なくなった。 夏休み、久しぶりにあいつが来たんだ。」 「それで会ったんだね。」 「ああ、そんで浅井のことを相談された。」 「私のこと…?」
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