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「母親が病気になるまでは、俺も同じような感じだったな。」
「高村くん…。」
高村くんが笑顔を向けるから、何だか悲しくなった。
「同情なんかするなよ。
俺はこれからのことを考えるとワクワクするんだ。」
苦しいことを乗り越えようと、前を向く高村くん
その笑顔が健気に感じて胸がキューッと締め付けられた。
「そんな顔するなよ。俺は今まで自分で何かしようと思ったことはなかった。
現状に満足して、なんの疑問も持たず、フワフワっと生きてきた。
だけど今は自分で何とかしようと必死で考え、自分の居場所を作ろうともがいてる。
前より生きてるって気がするんだ。」
悲しみや怒りを乗り越え、自分で歩き出そうとしている高村くんが大人に見えた。
「前向きに考えている高村くん、凄く素敵だよ。私、応援してるから…。」
「だろ?」
得意気な笑顔に応えようと思うのに、目が潤むのを止められなくて俯いて手で拭った。
「ヤッパ同情してるな。言わなきゃよかった。」
「うぅー、同情じゃないよ。感動してるの。
だって…高村くん大人なんだもん。きっと…きっと前向きに生きていれば、この先いいことあるよ。」
「だといいな。」
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