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急に真剣な目を向ける高村くん。長い睫毛の二重の目が私を捕らえた瞬間、ドクンと胸が脈打つのを感じた。
「え?」
「うそ、冗談だよ。浅井には敦がいるもんな。」
「高村くん、からかってるでしょ?
そんなのには乗らないからね。」
私をからかって反応を楽しんでるんだ。モテる男の余裕を感じる。
からかって楽しむなんて悪趣味だ。
「からかってないけどな。
ああ、そうだ。お昼、敦にメールしたよ。あいつ喜んでたよ。」
「駅で待ち合わせの件?」
「土曜10時、忘れるなよ。」
「分かってる。」
そうだ、土曜日、田中くんに会うんだった。
七海の心配をしてる場合じゃなかったんだ。
どうしよう、どんな顔して会えばいいんだろう。私は中学の人間関係から逃げた。私を無視する女子から…そして田中くんからも…
あの時、田中くんは何度も手を差しのべて孤独から引き出そうとしてくれた。けれどその手を取れなかった。
淡い好きな気持ちはあったと思うのに、男の子とどう向き合えばいいのかわからなくて一人じゃ飛び込めなかった。
あの時より私は成長してるかな?田中くんとちゃんと向き合えるのかな…?
分からないよ、高村くん。あなたの喜ぶ顔が見たくて承諾したけと…
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