第1章

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眠りを邪魔する耳障りな目覚ましを止めて、再び心地よい夢の中に吸い込まれていく。 少しだけ残った意識が『今寝たら遅刻するよ』と主張する。 消えかけていた意識が、少しづつ戻ってきて やっとのことで布団から這い出した。 夏休みの不摂生で、頭はまだ寝ている状態… 夢うつつで階段を下りていくと、もう朝御飯のいい匂いが漂っていた。 「おはよ夕貴。」 「ふぁぁ、眠い。 はよ。」 「よく起きれたね。」 「なんとかね。また明日からお弁当よろしく。」 「まったく、何で青雲なんかにしたんだろう。西高だったらゆっくり寝てられるのに…。 母さんの睡眠時間分しっかり勉強しなさいよ!」 母さんの睡眠時間がなんで私の勉強時間に変わるのか、訳がわからないと思いながらも 「はーい、感謝してま―す。」 ブツブツ言いながらもいつもしっかりお弁当を作ってくれる母に、一応感謝の意を伝えた。 弁当にありつけなくなったら大変だ。買い慣れない私では、購買のパンの争奪戦に太刀打ちできないと思うから…。 昼時の購買部の人だかりに入るのだけは絶対避けたい。 軽く朝御飯を食べ、不機嫌な母から逃げるように家を出た。 9月ともなると、暑さは少し落ち着いてきた。暑いなりに朝の空気はカラッとしていて心地いい。駅まで歩くうちに眠気も取れて頭がスッキリしてきた。
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