第1章

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そんなことを考えてると、目は文字を追っているのに小説内容が頭に入ってこなくなった。 顔を上げれば男子が見れるが、目が合ったら面倒だ。 見たい気持ちを押さえて本に集中することにした。 次は高校の最寄り駅近くという車内アナウンス。 顔は本に向けたままチラッと隣を見ると、男子も隣に座ったままだ。 やっぱりうちの生徒なんだ。 乗り込んだときはまだ席はイッパイ空いていたのに、私の横に座り、顔を見ることも話すこともなく1時間あまり一緒に座っていた。 …私のこと知ってる? そんなことを思いながら電車が減速する気配がして、小説を鞄に仕舞った。 顔を上げて降りようと立ち上がると、男子学生も立ち上がった。 同じ学校だろうから不思議じゃない。 「浅井さんでしょ?」 突然名前を呼ばれて左の方に目をやり視線を上げると、にこやかに微笑む男子学生。
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