第1章

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この顔、見覚えがある 名前は知らないが、多分私が中学の時に友達として数ヶ月付き合った人の友達。 「そうだけど…」 戸惑いながら答えたとき、電車が止まりドアが開く。 当然二人一緒に電車を降りることになった。 「中学の時、田中敦と付き合ってただろ?」 「ごめん、中学の時のことはあまり思い出したくないんだ。」 「ああ、ごめん。」 消し去りたい中三の記憶… この頃は思い出すこともなくなっていたのに 男子学生の出現で、鮮明に色付いて蘇った。 中3になって間もないある日、男の子に呼び出された。 男の子と話すのが苦手な私は、今まで呼び出されても付いて行くことはなかった。もっともらしい理由をつけて断っていた。 彼だけ何故付いていったかは、忘れてしまったけど… 後ろを歩きながらドキドキしていたことは覚えている。 校舎の裏で男子がこちらに向き直り、向かい合った。 「俺、三年二組の田中敦。前から浅井さんのことが気になってったんだ。 付き合って欲しいのだけど…。」 初めての経験でパニック寸前だったけど、田中くんの不安の混じった笑顔が可愛いと思った。 クラスメイトの中には男の子と付き合っている子もいた。 二人で楽しそうに話しているのを見ると、憧れることはあった。 けれどそこまで。自分が付き合いたいとかそれまで思ったことはなかった。
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