30人が本棚に入れています
本棚に追加
この顔、見覚えがある
名前は知らないが、多分私が中学の時に友達として数ヶ月付き合った人の友達。
「そうだけど…」
戸惑いながら答えたとき、電車が止まりドアが開く。
当然二人一緒に電車を降りることになった。
「中学の時、田中敦と付き合ってただろ?」
「ごめん、中学の時のことはあまり思い出したくないんだ。」
「ああ、ごめん。」
消し去りたい中三の記憶…
この頃は思い出すこともなくなっていたのに
男子学生の出現で、鮮明に色付いて蘇った。
中3になって間もないある日、男の子に呼び出された。
男の子と話すのが苦手な私は、今まで呼び出されても付いて行くことはなかった。もっともらしい理由をつけて断っていた。
彼だけ何故付いていったかは、忘れてしまったけど…
後ろを歩きながらドキドキしていたことは覚えている。
校舎の裏で男子がこちらに向き直り、向かい合った。
「俺、三年二組の田中敦。前から浅井さんのことが気になってったんだ。
付き合って欲しいのだけど…。」
初めての経験でパニック寸前だったけど、田中くんの不安の混じった笑顔が可愛いと思った。
クラスメイトの中には男の子と付き合っている子もいた。
二人で楽しそうに話しているのを見ると、憧れることはあった。
けれどそこまで。自分が付き合いたいとかそれまで思ったことはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!