第1章

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電車に乗り込むと、既に席は埋まっていた。 ドア近くのポールに掴まると、隣には吊革に捕まる高村くん。 「浅井は何で青雲にしたの?」 「逃げたの。」 「そっか。だろうと思った。」 「高村くんは?」 「俺は…親戚がこっちにいるし、いずれこっちに住むことになりそうだから…。」 「こっちに引っ越したら電車に乗らなくてもすむんだね。」 「そうなるな。」 「いつ引っ越すの?」 「後数ヵ月… 二年になった頃にはたぶん高校の近くに住んでる。」 遠くを見つめるように話す高村くん その顔は無表情に変わっていた。 「通学が楽になるね。部活だって出来る。」 「部活はしないよ。バイトするから…」 「バイトかー。楽しそうだね?」 「そんな気楽なもんじゃないから…生きていくためだよ。」 「どういうこと?」 思わず見上げると、高村くんは車窓の流れる景色を無表情で見ていた。 その横顔はゾクッとするほど冷たく感じた。 「母親が去年亡くなって… 父親が再婚することになったんだ。」 「…。」 彼の口から胸が苦しくなるような言葉が零れ始めて、戸惑いの気持ちの中言葉を失っていた。 「母親が亡くなってまだ一年なのに、女が家に入ってくる。 そんな家にいられないだろ!?」 急に低い声に変わり見上げると怒りの籠った表情に変わっていた。
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