Secret of a gentle boy friend.

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  「ね、」  彼は。 「……何」  素っ気無い。 「はい」 「ありがとー!」 「……。ありがとう」  暑い暑い中、本日はサークルの合宿で。今はみんなでバーベキュー中。熱々の鉄板に拡げ過ぎた具は、焦げ付き始めて大騒ぎだ。  そんな中で彼は。 「はい、どうぞー」 「ありがとーんっ」 「さんきゅー」  持ち前の性分で気遣いを発揮し、人気者だ……けど。 「……ん」 「あ、ありがと」  本当に、僕には、つれない。  彼とは、いわゆる幼馴染みだ。小学校に上がってすぐのとき、彼が僕の住む団地に引っ越して来てからの縁だった。  同い年の子供を持つ者同士とか、団地の会合とか、同じ棟の上下に住んでいるからだとか。親が親しくなる接点は多様に在った。  そうなると、僕と彼も自然と遊ぶ回数が増える。僕はと言えば彼のお姉さんと遊びたかったのだけど、それをゆるしてもらえなかった。僕は仕方なく、兄さんのお古を着て、兄さんと彼と騒ぎ倒した。  割と毎日いっしょにいた彼が僕から距離を取ったのは中学のとき。彼は、小学校のときから私立だった。僕は公立だった。  中学の入学式。奇しくも日取りが重なって、僕の制服姿を見た彼が、僕を見た瞬間ぶわわわっと猫が毛を逆立てるようにして硬直していたのを、覚えている。 「……」  まぁ、そこから。  僕と彼の距離は離れ、彼は僕に冷たくなったのだ。 「ねぇ」 「……ん」 「ねぇ」 「……何」  この通り。僕の呼び掛けには短く、しかも間を置いて応えて来る。これが他の子だと「ねぇ」「どうしたの」「なぁなぁ」「何々ー」と、男女問わずノリが良く、反射的に返す。この状態がずっとなので、さすがに僕も腹が立って来た。  今までだってそうだった。ただ、僕と彼の合う時間が短過ぎて、問い質す機会が無かった。僕も彼も大学まで同じ学校じゃなかったし、大学だって、たまたまいっしょだっただけで学部は違うし、サークルだって別に狙った訳じゃなかったし。  今日みたいに、一日いっしょなのは小学生以来だ。 「ずーっと訊きたかったんだけど」 「何」 「何で、僕のこと避けるのさ」  言った。言ってやった。現在、バーベキューの鉄板から離れた僕と彼のそばには、人はいない。空気の読める友人たちはこっそり周囲を退場していた。 「何で僕に冷たいの?」 「何で、って……」 「……」 「ねぇ、何で?」
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