いもうとしゃべる

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「お兄ちゃん、おかえりなさい!」 すっかり大人になった妹が、ばたばたと走って出迎える。 「…おじゃまします。」 そう答えると、妹は大きな声を出して抗議した。 「やだ、変なの!自分の家なんだから、“ただいま”でしょ?」 なんだ?中身はまるで子供じゃないか… 二十代も半ばを過ぎた妹のこんな様子に、俺は少し怯んでしまった。 だが、言い直すことはしなかった。 実家とはいえ、こんなに変わってしまっては… 思い出なんて、もうないのだから。 「それで…報告というのはなんだい? もちろんいい報せだろうね?」 長椅子に腰掛けた父が、前のめりになって聞いてきた。 なんだか嬉しそうなのは、察しが付いているからだろう。 三十を過ぎた息子が、あらたまって報告することなんて、そうないからね。 俺は、姿勢を正して言った。 「結婚したい人が居ます。」 そして写真を見せると、 彼女のこと、そのご両親ともよい関係であることを話した。
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