いもうとしゃべる

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これには父も母も、妹も大喜びだった。 元々、妹のあんな奇行も許してしまう家だったから、反対もなかった。 「よさそうな娘さんじゃないか。 おまえが選んだ人だ、私は大賛成だよ。大切にするんだぞ!」 「よかったわ!あなたにも大切な人が出来たのね!」 『それで、お兄ちゃんはどこに埋めるの?』 …その瞬間、自分が凍ってしまったのかと思った。 時でも止まったような両親の横で、妹はにこにこと笑っている。 「おまえ…なに言ってるんだよ。」 降って湧いた緊張で、声が掠れてしまう。 そして俺は、 なぜか震える手をそっと伸ばして、彼女の写真を隠した。 両親は、“解ける”までにまだ時間が要りそうだった。 「だって、 大切なものは埋めておかないと、なくなっちゃうよ?」 妹は、まだ笑っている…それが当然とばかりに。 その様子に、 ふと、妹にも恋人が居たことを思い出した。 …妹の…“大切な人”だ。
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