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“大切なものは埋めておけ”
これほど自分の言葉を恨んだことがあっただろうか…。
妹は、素直に育ち過ぎた…。
ひょっとしたら…妹は…!
考えうる最悪の事態を、疑わざるをえないと思ったときだった。
妹の、絞り出すような声が聞こえた。
「お兄ちゃんの言ったとおりだった…。
大切だったのに…
埋めておかなかったから…あの人、他の女のところに行っちゃった…。」
兄に対する子供っぽさと、恋人だった男に対する大人っぽさが入り交じった、
初めて耳にする妹の声だった。
「でも私…わかってるもん。
“大切な人”は、そんなことしたらダメだってことくらい、わかってるもん!
だから…だから…。」
そんな当たり前のことを、俺はおおいに良しとした。
「それでいい、それでよかったんだよ!」
「うああああん!お兄ちゃん、お兄ちゃあああん!」
俺は、妹の頭を何度も撫でた。
こんなの、何年振りだろう。
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