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ずっと溜まっていた澱が巻きあがった。
ぶつけることが出来ず苦しんだ想いをこの人は受け止めてくれている。
首筋に温かい雫が何度も落ちてくる。
晶の涙だと気づいた時に私の涙は止まった。
彼も私と同じように苦しんでいた。
首から伝い落ちる雫が教えてくれる。
「ごめん。」
「苦しませて本当にごめん。」
ギュッと回された腕が苦しいのに自分も晶の背中に回した腕で力いっぱい抱きしめた。
「晶。」
「やっぱり忘れられなかったみたいだよ。私……。」
博人を好きだと思ったのは自己防衛の一時的感情だったのかもしれない。
目の前で自分のために涙する晶に博人への想いは泡沫の夢のように消えてしまった。
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