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「加奈子。」
晶が私を呼ぶ。
微睡の中何度体験しただろう。目を開くと隣は空っぽで涙が溢れる。
瞼を開くのが怖い。夢かもしれない。
「加奈子。」
髪の毛の中を彼の指が分け入り、すっと梳かして撫でられる。指先の体温が背中にまわり、手のひらを背中で感じる。
夢ではない。
寄せた身体全体で直接彼を感じる。
「晶。」
あんなに彼を望んで。
いっぱいになったはずなのに。足りない。
一晩で埋められる隙間ではない。
静かに舞い上がったものは、沈むことを知らず、ただゆっくりと舞い続ける。
「晶。」
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