二章

53/60
前へ
/422ページ
次へ
 「澪さん。 あの、 なにを」  彼女はそれには答えず、 今日の本題ですと、 私の頬をムニムニしながら話しかける「昼間にあの相馬さんも言っていたことの、 繰り返しになってしまうけどね。 あの傘のあの影は観測士ではない方にも見えていた。 そんなことは瘴気に汚染されていようがされていまいが、 こちら側では起こり得ないのに。 でも、 実際には起こっているの。 それは、 わかりますね」  「はい」  もうそろそろ暗がりも深くなって、 代わりに波止場に停泊された船のきしむ音だとか、 草の匂いだとか、 私の頬を撫でる手のぬくもりだとかが鮮明になる。
/422ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加