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大学に入ってまで奇怪現象を信じてそれを霊的面から解明しようとするなんて。
人はみんなそう言って笑ったけれど、あたしは彼の好きな事に関する姿勢に惹かれていた。
彼は特別目立つ容姿をしているわけじゃなかったけれど、大きな優しさを持った人だった。
あたしは正直幽霊や怪物に興味はなかったけれど、彼があまりにも熱心にそれらの話をするので思わず聞き入ってしまった事が何度もあった。
そんな彼を目の前に見て、あたしは自分の心臓が止まるかと思った。
「どうして?」
あたしは目を潤ませて彼を見る。
彼はいつもの優しさをたたえたまなざしをあたしに向けていた。
しかし、あたしの両手をロープで拘束して家のはりにそのロープをくくり付けたのは間違いなく彼だった。
あれほど優しかった彼がどうしてこのような強行に及んだのか、あたしには検討もつかない。
お互いに好きになってから数カ月がたっていたが、あたしたちの関係は順調だったはずだった。
彼はあたしを見つめてこう言った。
「俺はずっと幽霊や怪物を調べていた。そしてこの手で捕まえてみたいと思っていた」
それはあたしもよく知っている事だった。
彼はそのために自分1人のサークルを立ちあげていたのだから。
「それが、どうしてあたしをこんな風に拘束することになったの?」
あたしは怯えた目を彼に向ける。
「俺の心をここまで惹きつけたのは君だけだ。君には人間にはない能力があると俺は考えたんだ」
何と言うことなの。
彼はただ綺麗なだけの恋心に霊的な何かがあると考えているたのだ。
一体いつからそんな考えになったのか、あたしは混乱して言葉も出なかった。
そして彼は顔から笑みをスッと消し目を吊り上げて、あたしへ向けてこう言った。
「君は人間じゃない。そうだろう?」
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