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質問するアルフォンスさんに、私……つまり、アンティークドールが、抑揚のない、静かな口調で答える。
「彼と、一度でいいから、一緒に外を歩きたかった……恋人のように……」
彼女が答えたと同時に、窓から、幸せそうに腕を組んで歩く恋人達を、寂しさと悲しみの思いを抱えて眺める、そんな映像のような思い出が見えてきた。
おそらく、これは彼女の記憶だろう。
「それは分かったけど……エスコート役がいないのは、どうしたらいいかな」
考えるようにして、アルフォンスさんが呟く。
彼女の愛した青年は、もう、この世にはいない。
青年がいないんじゃ、デートなんて……。
「デートが出来たら、それでいい」
口走る自分の口を、手で塞いでしまいたい。
それって、あれですか?
誰でもいいって事?
取り敢えず、デート出来れば、それでいいみたいな?
待って待って?
だって、私の身体なんですよ?
「そう?それじゃあ、相手役は、どうする?ここに三人いるけど」
アルフォンスさんの言葉に、『何ですと!?』と両頬に手を当てたい心境にさせられた。
私の視線が動き、ギルバートさんで止まる。
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