679人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうぞ」
私の心の叫びを無視して、どんどん状況が悪化していく。
スッと肘を張って、微笑みながら腕を差し出すアルフォンスさん。
何、その微笑み。
私だったから、絶対に、『頭でも打ったの?寝言は寝てからいいなよ』なんて言うくせに。
そのアルフォンスさんの腕に、彼女がスルリと腕を絡ませた。
そんな状態のまま、二人が向かったのは……。
「すみません。花束を下さい」
アルフォンスさんに声を掛けられ、花屋のおばさんが振り向いて目を丸くした。
「え?……あれ?サクラちゃんとアルフォンスさん?え?……いつの間に、そんな仲に?」
そんな花屋のおばさんの言葉に、今更ながら、ハッとする。
そうだ……。
事情を知らない人が見たら、何処からどう見ても、完璧、恋人同士の図だ。
腕組んで歩いておきながら、これで『恋人じゃありません』なんて、どの口が言う、状態だ。
ここは一つ!
ここはビシッと、否定して下さい!
アルフォンスさんに、祈るような気持ちでお願いする。
「そのピンクの花、とても綺麗で可愛いですね。それ入れてもらえますか?」
ひ、否定するどころか、爽やかな笑顔でスルーした上に、話題まで変えやがりましたよ、この腹黒師匠!!!!
「え…あぁ、いいよ。可愛らしい感じで包めばいいのかい?」
ほら!
否定しないから、おばさん、組んでる腕を凝視しちゃってるじゃないですか!!!!
最初のコメントを投稿しよう!