夢見る人形

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「どうぞ」 私の心の叫びを無視して、どんどん状況が悪化していく。 スッと肘を張って、微笑みながら腕を差し出すアルフォンスさん。 何、その微笑み。 私だったから、絶対に、『頭でも打ったの?寝言は寝てからいいなよ』なんて言うくせに。 そのアルフォンスさんの腕に、彼女がスルリと腕を絡ませた。 そんな状態のまま、二人が向かったのは……。 「すみません。花束を下さい」 アルフォンスさんに声を掛けられ、花屋のおばさんが振り向いて目を丸くした。 「え?……あれ?サクラちゃんとアルフォンスさん?え?……いつの間に、そんな仲に?」 そんな花屋のおばさんの言葉に、今更ながら、ハッとする。 そうだ……。 事情を知らない人が見たら、何処からどう見ても、完璧、恋人同士の図だ。 腕組んで歩いておきながら、これで『恋人じゃありません』なんて、どの口が言う、状態だ。 ここは一つ! ここはビシッと、否定して下さい! アルフォンスさんに、祈るような気持ちでお願いする。 「そのピンクの花、とても綺麗で可愛いですね。それ入れてもらえますか?」 ひ、否定するどころか、爽やかな笑顔でスルーした上に、話題まで変えやがりましたよ、この腹黒師匠!!!! 「え…あぁ、いいよ。可愛らしい感じで包めばいいのかい?」 ほら! 否定しないから、おばさん、組んでる腕を凝視しちゃってるじゃないですか!!!!
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