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私は低学年のクラスを受け持っていたので、高学年の彼女達との接点は、それまでは全くなかった。
彼女達が少々生意気なのは、とても気にはなる。
特に直樹の私に対する舐めかたは半端じゃない。
舐められるようになったのは、きっとあの出来事が契機になってだろう。
私がスマートフォンのことをよく知らなかったこと。
私は今年で二十五歳になるが、スマートフォンというものが未だによく理解出来ないでいる。
そんな私を、直樹はいつも笑ってからかうのだ。
「大人なら、スマフォぐらい知っときなよ」
ってさ。
……しかし、所詮はその程度のこと。
元々自分に自信が持てない私は、同年代の人と会話をするときには委縮をしてしまう。
これはコミュ障といわれるものらしい、直樹がそう云っていた。
だからこんな歳端もいかない子供達に対等な態度を取られるぐらいが、きっと私には丁度いいのだ。
多少言葉遣いは良くないけれど、直樹や彼女達はとても優しい子達だから。
そして……紅子との出会いは衝撃的だった。
今でも初めて彼女を見た時のことは、鮮明に覚えている。
自分が本来なりたかった女の子の理想像を、そのまま生を宿して具現化したかのような存在だったからだ。
私は彼女のことが好きで好きでたまらない。
もう一度人間に生まれ変わるとしたなら、彼女のような女の子になりたいって強く願っている。
……彼女達は先日、小学校を卒業した。
その際に開かれた同窓会に私が参加しなかった理由は、生徒だけが集まる会に、教師も一緒になって参加するというのが、とても恥ずかしいことだと思ってしまったからだった。
紅子に会いたいという気持ちは、私の胸中には強くあったのだが。
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