11.真相、そして始まり

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「ねえ? 武。咲耶と連絡が取れないの。心配よ。様子を見に行きましょう?」 紅子が笑顔で私に云ってきた。 ああ、やはりこうなるのか。 咲耶の顔と予言が、私の頭の中にちらついて離れない。 離れてくれない。 彼女の予言からは逃れることは出来ないのか。 ここで咲耶の様子を見にいくことを断れば、彼女の予言に抗うことが出来る。 ……しかし、私は覚悟を決めている。 今は罪を逃れるつもりなどはない。 推理小説の登場人物の一人のようになりきり、その役割を演じきりたい。 不思議とそんな気持ちになっているのだ。 罪を逃れるつもりならば、あの家ごと今から燃やしたっていいんだ。 それですべての証拠は隠滅出来る。 別に山火事が起ころうが、そんなことは私にとってはどうでもいいのだから。 ………………あ。 ああ……。 そ、そういえば、あ、あの小説の冒頭には、 『雲行きが怪しくて、雨が降りそう』 ……そんなような描写がなかったか? 私は精気が抜け落ちるような深い溜め息をついた。 そんな工作を働いた所で、あの内容通りに天候に阻害されてしまうのだろう。 運命はきっと変えられない。
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