第1章

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A1とA2の罪状は調べても詳しい事情までは調べないのがあいつらなのだ。 善悪の判断がつかん癖して、自分たちが罰を執行する側と考え違いをしている。 私にとっては二人の都合などどうでもよいのではあった。 が、しかし執行後とはいえ自分達の裁定が正しかったのか明確な答えは欲しい。 そう考えていた私の横をちょうど移送されるA2が通ったのだ。 A2は私の方を向いてニヤリと笑い、彼を繋いでいる鎖を持つ獄卒に了解を取って私に近づいてきた。 そして彼は私の耳元でこんな風に手を口に当ててから、こうして囁いたのだ。 「僕はね、片割れなんです。Aは一人なんです」 それだけいってA2は獄卒に連れて行かれた。 私は暫く要領を得なかったが、ハッと気づいてね。 こんなに簡単なことかと。 それで改めて使いの者をやってAについて調べさせたわけだね。 そしたらやっぱり、A1とA2は同一だったんだよ。 A1の方は刑務所で執行官をしていてね、心を病んでしまったようだ。 一方のA2はただの快楽殺人者というわけだね。 まぁ地獄での刑は執行してしまったから、もう私にはどうしようもないしどうでもいいんだ。 あんまり騒ぐと責任を取らないといけなくなる。 うん、まぁA2は暫くしたら転生するだろうな。 誰かの片割れとして。
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