第1章 プロローグ

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<出逢い> その途端… あはははははっ!!とさっきよりも高い声で彼が笑って 「怒るより笑った方がいいんじゃない? でもひとりの時は…見ててこわいよ」と言いながら、 今度はイジワルな顔でフッと笑った。 その顔が、やっぱり猫みたいに可愛くて。 私もつられて笑ってしまった。 そう。 私が思う彼のイメージは猫。アメリカンショートみたいな可愛らしい感じというよりは… アビシニアンみたいに、子猫の時から…どこかクールさを纏っていて。 甘えや欲をうちに秘めているイメージ。わかるかな? あれっきり彼には会っていない。 格好からしてミュージシャン?アイドル?裏方ではないと思うんだけど…今日も、あの気怠そうな声で猫のように過ごしているのかなぁ~なんて。 長く長ーく社長室まで続く、薄グレーの廊下を掃除しながら、一人でそんなコトを考えていた。 「なな!仕事の話をするから俺の部屋に集合!」と遠くから社長の声がした。掃除中の箒たちを急いで片付け「はーい!今すぐ!」と足速に社長室へ向かった。 あの後、彼との偶然の出逢いの後。 私は無事に社長への挨拶をすませ、雑用から始めることとなった。こんな私でも雇っていただけるだけ有難いです!と思いながら仕事に励んでいる。 社長室のドアをノックしてあけると… そこには、円形のテーブルに役員らしきメンバーと、私と同い歳かそれより若いであろう男の子たち5人が座っていた。私も慌てて「遅くなってすみません」と挨拶し、空いている椅子に促され座った。 みんなの視線を集める社長が口を開いた。社長の第一声におぉ~~っと、そこにいる全員が拍手をした。 なんと男の子5人のデビューが決まったとのことであった。私も素直にスゴイ!と思い拍手にのった。 その後、サポートメンバーが次々と発表され、役員の方たちが代わる代わる挨拶をして握手をかわしていた。 私は何処か、遠い世界の様にひとり感じながら拍手を続けていた…次の瞬間までは。
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