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第9章 沢山の支え
俺は、時間のない世界にいた。
しかし今日からは違う。
やっと 家族と面会が
出来るようになるのだ。
集中治療室なので、
時間はとても少なかったが
ここで過ごす俺にとっては
例え10分間でも
唯一の時間だった。
最初は母親のみの面会だった。
俺が緊急手術をした時の事を
沢山教えてくれた。母親や家族達が
どんな気持ちでいたのか。
どれだけの緊迫感だったかを。
やっと理解出来た感じ。
それを聞いた上で、
兄弟や、家族にも会いたい気持ちが強まった。
しかし暫く経って会えなかった理由が分かった。それは数日経った頃だった。
救急病棟に、弟と妹が入ってきた。
久しぶりの再会に、俺はいつもの様に話したかったが、脳の信号がちゃんと機能してない俺は、思ってる事をそのまま話す事ができない。なのでどうしてもカタコトになってしまう。
心配かけてごめんねと言う言葉が
俺の意思とは関係なく、
心配、かけてました、スミマセン、でした、、に変換するので精一杯で
もう一言一言、話そうとすればする程、
敬語の様に返還されたり、例えば心では「ありがとう」と言いたいのに「らりげたい」とか意味分かんない言葉に変換されたり、本当に苦戦した。
弟達はそんな姿を見て、
助かって良かったと思う反面、
妹は泣いてしまった。
それにつられて、弟も泣いてしまう始末だった。
こんな兄弟の姿は見たくなかったと思う。
俺だって見たくない。
これ以上は見せなくなかった。
お互いに精一杯、少し冗談を交わしたりしてすぐに面会時間が終わった。
別れる時は笑顔だった気がする。
お互いが精一杯に。
しかしその後日、二人の涙の理由は
それだけじゃない事が分かった。
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