第1章「宣告」

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第1章「宣告」

「入院、リハビリ含めて 少なくとも3年は掛かる。」 そう宣告されたのは 緊急手術が終わってから 少し経ってからの話だった。 これは倒れる前の話。 当時、空咳(からせき)が止まらない時期があった。 パン屋でバイトしてた時期で、 パン粉のせいかなくらいに思っていた。 そんなある日の朝、 両手で数える程の口内炎ができた。 突然の事にびっくりし、 初めて近所の耳鼻科に行った。 耳鼻科の先生はその状態を一目見て、 重大な病気かもしれないと言った。 そのまま総合病院の口腔外科を 紹介された。 紹介された先の病院。 ここでも口腔外科の先生に、 君、ガンかもしれないと言われた。 とてつもない衝撃が走ったが その時、「そうなんですか?」と、 先生には気丈に振る舞った。 脳内は真っ白。 診査室から出る時には 足の力が全く入らなくて 廊下の手すりに這うように歩いた。 生まれて初めて 腰が抜けたあの時の感覚を 5年以上経った今でも 鮮明に覚えている。 今でもあの日の事を思い出すだけで 身の毛のよだつ感覚だ。 口内炎用の軟膏を処方された。 症状が治らない様なら、 精密に調べる事になった。 しかし軟骨を塗り、数日で 口の中の口内炎は全ておさまった。 一週間後、先生は薬ですぐ治ったなら その心配は少なそうだねと、 また何かが起きたら教えてねと言われた。
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