第1章「宣告」

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しかしその時に俺の不安は 解消されなかった。 「ガンかもしれない...。」 その言葉があまりにも衝撃的で この時点での俺は体の中になんとなくの予感を感覚的に、身近に感じるようになっていた。 この嫌な予感と感覚が、 その後異変が起ても 病院に行かなくなった理由でもある。 そして この異変が起きたその当時、 お世話になっていた音楽事務所で 配信デビューが決まっていた矢先の 出来事だったからでもあった。 R&Bシンガーデビューという 一つの夢が叶う大きなチャンスが迫っていたからだ。 この時期は、 パン屋さんでのアルバイトと、 友人が営むお店を手伝う傍ら SEIYAと言う名前で 本格的に作るのは初となる オリジナル曲の作詞、メロディー制作をし、 何度も打ち合わせをし 歌い方の猛特訓をしていた頃だった。 順調に行っていたと思う。 バイトも毎日、頑張った。 だからこんなところで 止まりたくない気持ちがあった。 せめて配信デビューなどをして、 アーティストとしての土台を作ってからそういう現実と向き合いたかった。 目の前にあるものに前向きだった当時の俺は、 その事実さえ、受け止める事が出来ないと 分かっていたんだと思う。 空咳や、口内炎以降 微熱がちだったり、 リンパなどが腫れたりと 別の異変が起き始めていた時も それに気づいた家族や友人に 病院を進められても 病院に行く事を拒んでいた。 ただの疲れだと。 そしてまだ10代の俺には 何より恐怖が増さった また変に宣告もされたくなかった。。 俺なんでこの歳で死ななきゃいけないの?とか、今はお願いだからやめて欲しいという気持ちが入り混じっていたのもあった。 結果的にそれがあだとなったのだ。 結果的にその数ヶ月後、 倒れてしまった俺は、 緊急手術、長期リハビリ入院を 宣告される事になる。
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