依頼 2

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 電車を降りた志継は、ジーパンのポケットから携帯電話を取り出し耳へとあてた。此処までは普通の交通手段でも来れない事はないが、此処から先、御所へ向かおうと思えばやはり迎えがいる。  一般に知られている京都御所へ行くのであれば何の問題もないのだが、彼が今から向かおうとしているのは、地中深くにある裏の御所なのだ。  ――京都市の地中には、地下都市が広がっている。  これは密かに広まっている只の噂だが、半分は当たっていた。いや、都市というのは大げさだが、鬼皇の瞑る御所を中心として、周りには色々な施設が造られていた。その為御所へ向かおうと思えば、この京都駅から地下へと続くエレベーターへと乗って、そこからは地下道を車で行くしかない。  苦手な電話のボタンを押した志継は、一回のコールで確実に出る庁の役人の声に密かに溜め息を吐いた。  ――冷たい、機械的な声。  この国の裏の役割を果たす宮内庁の者は、よく言えばテキパキと、悪く言えば感情なく全ての事柄を処理する。それは、自分や古崎にも当てはまるし、別に馴れ合って仕事をしたい訳ではないのだから、構う事もないと思う反面、嫌悪感が心の底で渦巻く。  だから、出来るだけ宮内庁の者との連絡は古崎に任せていた。 「斎藤です。下宮殿の火急の呼び出しで、今駅に着きました。迎えをお願いしたいのですが」  斎藤の言葉に、感情の出ない声が即答する。 「はい、承知しております。車が既に待機しておりますので、そのまま御越し下さい」  志継の返事と同時に電話が切られる。暫くその携帯電話を見つめていた志継は、軽く肩を竦めて歩き出した。 『関係者以外立ち入り禁止』  そう書かれた立て札の脇をすり抜ける。まさか、この先に闇の御所へと続く道が続いているとは誰も思わないだろう。  奥へと進んだ志継は、動いていないエレベーターの前で足を止めた。鍵を取り出し、それをエレベーターの鍵穴へと差し込む。ウーンと小さく音をたてると、ゆっくりとドアが開いた。素早くそれに乗り込み、ボタンを押す。  静かに下りていくその中で、志継はキュッと目を瞑った。ゆっくりと息を吐き、感情を体の奥底へとしまい込む。  古崎がいない以上、全ての事柄を自分で処理しなければならない。その為には、顔に出る感情は無駄なモノでしかなかった。
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