第1章

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神さま、僕は ある朝目が覚めると目の前に天使がいた。 天使、と言っても風貌からそう定義付けざるを得ない物体が、ふわふわと宙を舞っていたのである。 背中から生えているであろう白い羽は白鳥のようだ、白鳥を実際見たことはないが。 顔は……よく分からないが変な顔だ。 と言うかそれが僕を、これが本当に天使なのかと困惑させる原因でもあるのだが、どう見ても意地の悪そうな……例えるなら悪魔みたいな顔をしているのである。 でも全身白づくめの格好といい羽といい、天使だと言わざるをえない。 ああ、これは夢なんだな、と思った。 だって、そんな状況、現実にあったらとりあえず僕は目の前の物体を捕獲してテレビ局に連れていく。 僕の冷静な対応はこれは夢だという前提でなされている。 「……あなたは天使ですか」 これになんと答えるというのだ。 はい、そうです、なんて答えられても困る。 はあ、そうですか、と答えるしかなくなり、そこで夢は終了するだろう。 しかし夢は終了しなかった。 すなわち彼(?)は、はい、そうですとは答えなかった。 「あなたを迎えに来ました」 ここでいよいよ、夢だという確信を持ち始める。 それにしてもえげつない夢を見るものだ。 迎えって何だ。天使のいう迎えって……。 「僕、死ぬの?」 「よくお分かりで」 いやいや。よくお分かりでじゃないだろ。でもまあいい。夢なんだから。 「なんで死ぬの?」 「寿命が迫ってまして」 「え?待って、僕確か今23歳くらいだったと思うんだけど……」 「間違いありませんね。今あなたは大学卒業して就職活動中です。……まあ、まだひとつも内定が決まってなくてアルバイトで食いつないでる状況ですが」 「うるさいよ。……え、寿命ってそんなもんなの?」 天使が何かを言おうと口を開いたとき、インターホンが鳴った。 ……インターホンが鳴った。 「……すいませーん。宅配便でーす」 ドア越しに聞こえる声に、僕と天使は顔を見合わせる。 「こんな朝っぱらから宅配便とは」 天使がやれやれ、といった口調で言った。 「まったくだ」 のそのそとベッドから這い出し、ハンコを探して、ん?と思った。 ん?どころじゃなかった。 頭が一瞬真っ白になって、ふわふわと空中浮遊する天使を二度見した。 それから、追い討ちをかけるように再び鳴らされたインターホンに体を震わせ、 「夢じゃないの!!??」
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