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はぁ。終わったーー。
なんとか、アドリブで5分以上話してやったわ。あの先輩にちょっときついこと言っちゃったなー。
「おりゃおりゃおりゃー!」
振り返ったと共に荷物が消えた。
ふと、前を向くと私のカバンがバイク男に取られた。
「きゃー!ひったくりー!」
私、入学式でどんなに運ついてないの。
バイクの前に年下の男の子がいた。
流石にあの子には止めることはできないか。でも、一応叫んだ。
「そのバイクひったくりー!誰か止めて!」
少年は少し加速をつけその男を蹴っ飛ばした。バイク前のおばあちゃんにぶつかってしまう心配をしたが、蹴っ飛ばした瞬間にバイクの鍵を抜いたらしい。
やることが漫画みたい。
「ありがとうございます!」
「別に、大したことじゃないんで。」
眼鏡少年。無愛想か。おまえは。ま、今回は感謝でいっぱいだから一緒に帰ってやろう。
「なんでついてくるんですか。」
こいつ。
「…」
ついてくるんじゃなかった…
「あの、気をつけた方がいいですよ。
入学式で舞い上がってる時は。」
「なんで知ってんの!!」
「見てたら。」
少年はクスクス笑っていた。
「笑うな!ちびメガネのガキ。」
「は?言ったな、お前!助けてやったんだぞ!」
「その口の効き方!私歳上だから!」
そんなこんなで、こんな会話が続いた。
「私こっちだから。」
「あの、名前なんて言うんですか?」
「あんたに教える名前なんてないわよ。」
「まだ、言うか。」
ちょっと間があいて私達は笑った。
今日は運はついてないけど、2人のいい人に出会えたいい日になった。
いい人ではなく運命の人になることをまだ私は感じていなかった。
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