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―――――加奈の気持ち―――――
転校初日、私、八代加奈はイジメを見た。
女子3人が、気弱そうな1人の女子を悪しざまに罵倒している。
他のクラスメイトはその4人が見えていないかのように振る舞っている。
何人かが時々目を向けてはすぐに反らして元の会話に戻る姿で、この人達にも見えているのだと分かった。
女子は関わり合いになるのが怖くて、男子は女子の揉め事なんて関係ない。
私は、転校初日に空気を読まない行動をとったら生意気と思われる。
見て見ぬふりをする理由はいくらでもある。
でも私にはそんな理由、理解が出来ない。
「ねえ、やめなよ」
出来るだけ刺激しないよう明るく、気後れしないよう大きな声で言った。
クラス中の視線が加奈に集まる。
「あんたにゃカンケーないだろ」
罵倒していた主犯格の女子がそう言い、後ろの2人が不安そうに顔を見合わせた。
「あるよ。今日から私も同じクラスだし。それに、高校生にもなってイジメなんて格好悪いよ」
加奈の言葉に、主犯格の女子は顔を真っ赤に染め
「そーかよ!じゃあ勝手にしろよ!」
と吐き捨てて大股に教室の出口に向かい、出口で立ち止まって振り返り
「絶対、後悔するからね」
と言って睨み、教室から出て行った。
残された2人は「結衣…」と名前を呼びながら追いかけて行く。
ざわざわと教室に会話が戻り、イジメられていた子が俯きながら近づいて来る。
「あ、ありがとう。私頭も悪いし運動も出来ないしお喋りも苦手だし…」
「え?だ、大丈夫だよ。落ち着いて」
「あ、あの、加奈ちゃんだよね。…加奈ちゃんって呼んでいい?」
「いいよ。私はなんて呼べばいい?」
「ヒロって呼んで」
ヒロは顔を跳ね上げて笑顔を向けた。
「ヒロさんね」
「ううん、呼び捨てにして。ヒロって呼んで」
「そう?じゃあ私も加奈で良いよ」
「ホント?加奈、メアド交換しよ」
「ええ?う、うん…」
今までイジメられていて、優しくされたのがよほど嬉しかったんだな。
これからは私が守ってあげなくちゃ。
加奈は人懐っこいヒロの笑顔を見て、そう思った。
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