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あくる朝も、校門でヒロが待っていた。
ヒロは元気な笑顔で挨拶をしてくる。
相変わらず恋スタの話を捲し立てて来るけれど、内容を知っているので昨日よりは理解が出来た。
教室に入ると、もう松田理恵と高橋美月が来ている。
結衣は今日も遅いようだ。
「おはよう。松田さん、高橋さん」
昨日、迷惑をかけてしまったし、くじを引く時に思った。
「これ、槍らぶなんだけど、もし良かったらあげるよ」
「あー!天沼矛!」
2人が悲鳴のような喜びの声をあげる。
「あめの…え?」
「アメノヌボコ。すっごいレアキャラなんだよ」
「そうなんだ。私、分からないから。喜んでくれる人にあげた方が良いと思って」
2人はキャーと手を合わせる。
「私達、これが欲しくて何度も本を買ったんだけど、全然当たらなかったの」
「じゃあ良かった。でも1つしかなくて、ゴメンね」
「そんな事ないよ。2人のにすれば良いよね?」
「ね~。結衣に自慢しようね」
2人はニッと顔を見合わせた。
「結衣さんも槍らぶしてるの?」
「うん。結衣はね…」
「どうして!」
突然、後ろからヒロの叫びが聞こえた。
「どうして私にくれないの!私が親友なのに!」
「え?でもヒロ、あの時いらないって…」
「私が親友なんだから私にくれるのが当たり前でしょ私はその子達以下なのどうせ私は1人なんだ私ばっかり嫌な思いしてどうして私の気持ち考えてくれないの」
「八代さん、ありがとう。やっぱりいいよ」
「うん…彼女にあげて」
「え、でも…」
2人はいたたまれなくなって、缶バッジを置いて教室を出てしまう。
「ねえ、ヒロ、落ち着いて。槍らぶ好きだったの?昨日は最悪って言ってたよね?」
「私が親友なのにどうして私にくれないの私よりあの子達の方が大切なんだ」
「違うよ。違うよ。落ち着いて」
「嘘ついても態度で分かるどうせ私は勉強も運動もお喋りも出来ないダメな子だから誰からも好きになって貰えない私の事が嫌いなんだ私はいつも1人なんだ」
「ゴメンね。ゴメンね。これヒロにあげるから。ゴメンね」
ヒロは缶バッジを加奈の手から奪い取り、固く握ったまま机に突っ伏して大声で泣き続けた。
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