第1章

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 本州最北の県――青森。  とはいえ、夏はやっぱり暑いもので、三十度を超える日だってざらにある。  県のほぼ中央に位置するここ、青森市でもそれは変わらない。  大学も夏休みに入り、日々バイトや遊びに明け暮れる。  駅前で売られる百円のチリンチリンアイスを求めることもしばしばだが、ここ最近はサーティワンばかりだ。  その日、私は友人にパサージュ広場に行こうと誘われた。  数日前からそこに蜃気楼が現れることは、青森市民なら誰でも知っている。新聞にも載るほど有名なのだ。  なぜこんなところに蜃気楼が出現したのか? 原因は何なのか?  しかも、オカルトなことにこの蜃気楼。ある人には広場の大木が逆さまに見え、ある人には巨大ハマグリが鎮座しているように見えるという。  そんな摩訶不思議な蜃気楼を一目見たいとばかりに、市外からやってくる人々も多い。おかげで、付近の飲食店は大繁盛。ねぶたの時期には及ばないが。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!