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「いいかい、外すよ」
和也は震える手で、ドライバの先端を赤いネジの頭に当てた。
しかし、ネジは回らない。
「もしかしたら回した途端爆発するかもしれない」と思うと、和也の手は石になってしまったかの様に動かなかった。
ドライバをはじめ、様々な工具を詰めた鉄製の箱。
これは利奈が見つけてきた。
バスルームの洗面台の下にあったらしい。
しかしいくら探しても、和也の眼鏡、それと2人の携帯電話は見つからなかったようだ。
「爆弾の解体なんかしないで、助けが来るまで大人しく待つ」
和也はそんな意見を利奈に提案した。
しかし利奈は、「いつ爆発するか判らない爆弾と一緒にいる方が怖い」と言って、和也をけしかけた。
そういった次第で、今和也はドライバを握っている。
勿論和也は、ドライバを握る前にノートにあったこの箱の回路図と制御プログラムのソースコードを穴が開くほど睨んだ。
しかし、素人に毛が生えた程度の和也の知識では、完全に解読する事は出来ない。
「"おそらく"赤いネジから回せば良い」程度の解析結果だ。
故に和也は自信を持てないでいた。
和也は一旦ドライバをネジから離し、隣でしゃがんでいる利奈を見る。
「り、利奈ちゃんはバスルームのバスタブの中に入って、身を小さくしてて。
そうすれば多分……」
「馬鹿言うなよ」
利奈は和也を睨んだ。
「アンタだけを危険な目に遭わせられるかよ。
あたしはここにいるぜ」
利奈はそう力強く言った。
和也よりも数段落ち着いて見える。
そんな利奈を見て、和也は覚悟を決めた。
「行くよ」
和也は震える手でドライバをネジに当て、そして回す。
徐々にネジがその本体を見せるが、箱に変化はなく、やがて想像以上に長いネジが箱から外れた。
その途端、和也の全身から一気に汗が吹き出る。
「こ、怖かった……」
和也は正直に、今の気持ちを口にした。
「良くやったな。
正解だったみたいだ」
そう言った利奈は微笑んでいたが、和也同様、化粧気のない顔は汗まみれだった。
「よし、次はオレンジ。
行くよ」
「ああ、しくじるなよ」
やがて、7つのネジが外れた。
すると天板も外れた。
「黒いネジはダミーだったみたいだね。
ネジの頭しかない」
「でも、蓋が外れても蓋に付いてる、LCD?
そいつは動いてるな」
言われて和也は慎重に蓋を持ち上げる。
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