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外れた天板、そこにあるLCDの一つがその光を消した。
残るLCDは全部で7個。
利奈はハンダごてを握る和也の横顔を見た。
「これで最後」
和也はハンダごての先端を、残った最後の蝋に当てた。
配線が外れる。
すると突然、電子音が鳴り響き、LCDが数字ではなくアルファベットを表示しだした。
「【T】、【A】、【L】、【O】、【S】……。
タロスって読むのか?」
利奈は思わず呟いた。
その声に、和也が飛びつくように、利奈の横からLCDを見る。
「タロス……、聞いたことがある。
なんだったかなぁ」
和也はハンダごてを捨て、右手の中指で自分の額を叩く。
LCDは暫くそのまま【TALOS】と表示していたが、やがて再び数字が踊りだした。
「あっ、また数字が……」
利奈は言葉を途中で飲み込んだ。
和也は真剣な眼で、何かを考えている。
邪魔にならないようにと、利奈は口を閉ざした。
やがて和也は立って部屋の中を歩き始めた。
手持ち無沙汰の利奈は、何度も見回した部屋をもう一度見回す。
そして本棚に眼を止めた。
利奈は口の中で何かを言い続ける和也を横目に、本棚から分厚い百科事典を引き抜く。
「こんな本読むの、初めてだな」
小さく呟きながら本を開いた利奈は、その瞬間目眩(めまい)を覚えた。
ページに書かれた細かい字は、全てがアルファベットである。
「英語かよ!
ぜってぇイジメだよな、これ」
早々に読むことを諦めた利奈は、勢い良く本を閉じる。
しかし和也は目を輝かせて、本棚に飛び付いた。
「そうか!
分からなければ調べればいいんだ!!」
和也は指で背表紙を撫でながら、本を吟味し始めた。
利奈は和也に訊く。
「あんた、英語読めるの?」
「殆ど読めない」
和也の答えに利奈は溜息を吐(つ)いた。
「けど、きっかけがあれば、何か思い出すかもしれない!」
和也はそう言って、背表紙に【Ta】と書かれた百科事典を引き抜き、勢い良く捲りだした。
「【Talos】、【Talos】……。
あった!
えっと、【Greek】って確か【ギリシア】って意味だよな。
やっぱり【Talos】はギリシア神話に出てくる単語か。
他に読める単語は【Zeus】……【Hephaestus】……。
【ヘパイストス】!
そうだ思い出した!
鍛冶と工芸の神【ヘパイストス】が作った青銅の人形だ!」
和也は1人で叫ぶと、本を捨てて再び箱の中を覗きこんだ。
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