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利奈も和也に倣って箱に近付く。
「判ったのか?」
「うん。
詳しい説明は省くけど、【タロス】はギリシア神話に出てくる、簡単に言えばロボットなんだ。
物凄く強いんだけど、ちゃんと弱点がある」
和也は言いながら、小さなペンチを手に取った。
「タロスは踵(かかと)に刺さった釘を抜くと、体内の血液が全部外に流れて死んじゃうんだ」
「血液?
ロボットなのに血が流れてるのか?」
利奈は疑問をそのまま口にした。
和也はその疑問に対して真面目に答える。
「って言うか、大昔に考えられた設定だからね。
その辺はあまり突っ込まない方がいいよ。
とにかく、爆弾の中を見てみて」
そう言われた利奈は「う~ん?」と唸りながら箱の中を覗いた。
「釘みたいのが基盤に刺さってるでしょ?」
「そうだな。
これを抜くってことか?」
利奈は顔を上げて和也を見る。
「多分ね」
言い切らない和也に、利奈は少し苛立ちを感じた。
「あんたさぁ、嘘でもいいから『絶対大丈夫』って言ってくれよ」
「ごめん。
僕は【絶対】って言葉が嫌いなんだ」
そう言って和也は利奈を見た。
「僕は世の中に【絶対】はないと思ってる。
この場合だって、この爆弾を作った人が釘を抜くように作ったつもりでも、何処かに不具合があって、抜いた瞬間に爆発するかもしれない」
その言葉に利奈は思わず和也を睨んだ。
「人を不安にさせんじゃねぇよ!!」
「あっ、ごめん……」
和也は利奈から視線を逸らして、床を見つめた。
「でもね、逆に『僕達が絶対に助からない』ってこともないと思ってる。
たとえその確率が1億分の1でも、僕はその可能性を信じたい」
和也はペンチを握って再び利奈を見た。
「【大丈夫】とは言い切れない。
だけど僕は【大丈夫】だと信じてる。
だから利奈ちゃんも信じて」
利奈は暫く和也の目を見つめていたが、やがて「解った」と頷いた。
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