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『警部!
有力な情報を得ました!』
電話の向こうの高野(たかの)の声は、興奮で震えていた。
『社名までは判りませんが、4年前、とある製薬会社が栄養剤のテスターを募集していたようです。
どうやら利之はこれに応募したようです』
「でかした!
良くそんな情報を掴めたな!」
東誠(あずままこと)も負けずに興奮する。
『はい。
当時、金に困っていた利之に、そのバイトを紹介したって奴を運良く見つけられました』
「この短時間で良くやった。
早速その製薬会社が何処にあるかを、こちらでも調べてみる」
『お願いします!』
今度は高野の方から電話は切れた。
東は部下達に指示を送り、また電話を手に取る。
「千葉港署刑事課課長東誠警部であります」
『またお前か……』
電話の相手である千葉県警察本部組織犯罪対策本部捜査第四課課長が明らかな嫌味を言った。
「先程は刑事部捜査第一課への取り次ぎ、ありがとうございました」
『聞いたぞ。
一課の捜査にケチを付けたようだな』
「その件に関しては、後ほど改めて謝罪に伺います。
それより今はあまり時間がありません。
早速本題に入ります。
傘下に製薬会社を抱える暴力団に、お心当たりはないでしょうか?」
『……2、3ある』
相手はやや歯切れ悪く言った。
「教えていただけないでしょうか?」
やや間が開いて、相手は小さい声で『いいだろう』と言った。
『ただし電話では無理だ。
直接お前が訊きに来い』
「解りました。
すぐに伺います」
東は電話を切ると、すぐに席を立った。
そんな東に新田(にった)警部補が慌てた様子で声を掛ける。
「警部!
こんな時に何処に行くんですか!?」
「県警に行って話を訊いてきます」
「そんな!
誰が捜査の指揮を取るんですか!?」
「1時間以内に帰ってきます。
その間は新田さん、よろしくお願いします」
「無理ですよ。
人の手が足りてないんです。
県警に応援を要請して欲しいくらいです」
すると東は口だけで笑ってみせる。
「もう要請はしていますよ」
東がそう言った途端、署内が慌しくなり、スーツを着た男達が刑事課に現れた。
東はその先頭に立つ男に敬礼をする。
「お前が東警部か?」
東よりは若干年上に見える、背の低い固太りのその男は、東を睨んでそう訊いた。
「そうであります」
「私は県警刑事部捜査一課の横田(よこた)警視だ。
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