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細流は1人、クラシックの調べの流れる喫茶店でチョコレートパフェを食べていた。
広くない店内の一番奥。
細流はそこで、スプーンを使ってゆっくりと生クリームを口に運ぶ。
と、細流のバッグの中で携帯電話が震えた。
細流は艶のある自身の唇を舐めて、携帯電話を取り出す。
「はい」
『どういうことだ?』
電話の相手は無駄なやり取りなく、いきなりそう言った。
「なにがでしょう」
『言わなくても解るだろう。
俺はガキの頭の中にある情報が欲しかっただけだ。
何でガキごと攫った』
「彼が素直になってくれなかったからです。
彼は忘れたと言っていますが、少し刺激を与えれば話してくださると思いまして」
『ふざけるな。
既に警察も動いている。
下手をすれば奴の経歴から俺の所まで手が回る』
すると細流は美しく微笑んだ。
「大丈夫だと思いますよ。
製薬会社【サンセット】は【鹿鳴会(ろくめいかい)】と直接関わりはありませんし、既に倒産しています。
それに、何故かあの事に関わった人達の多くは事故死、または自殺しています。
西上(にしがみ)さんのところまで辿り着くには、相当の時間が掛かる筈です。
その頃には全て終わってますよ」
『だといいがな』
「それと、お電話はお控え下さい。
何処で誰が聞いているか分かりませんから」
『解った』
そして電話は一方的に切れ、細流は再び微笑む。
「こんなところで、平気で電話に出る私も私ですけどね」
そう小声で呟いて、細流はまたチョコレートパフェを食べ始めた。
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