第11話 ずっと片想い

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「おばあちゃんも東京ではわたしの名前多いのかって不思議そうにしてたけど、橋本さんもそう。こっちの言葉で“きら”って何か意味ある?」 渋面だった紘斗の顔が、質問したとたんに緩んだ。 おもしろがるというよりは、安堵したような気配だ。 なんだろうと思って紘斗を覗きこんでも、 「何もない」 とあっさりしたひと言返事がきただけで終わった。 「狐につままれるってこういうことかも」 紘斗はくちびるの端をわずかに上げながら、促すように顎をしゃくった。 「わたし、弱点?」 姫良は日傘を差しながら、もう一つ気になることを問いかけてみた。 「説明できない」 なぜか苦笑いした紘斗はひと言で姫良の探究心を退けた。 それから紘斗が連れていったのは土手だった。
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