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「地味なお祭りは、伝統っていうよりならわしって感じでいいね。食べる?」
姫良は梅味の飴を口に含んでから、スカートの上にのったお菓子を指差す。
紘斗は、
「おれはいい」
と首を振って続ける。
「東京にも残ってるとこあるんじゃないか。開けたとこばかりにいるからわからないだけで」
「そうかも。今年、紘斗と初詣した神社もそういえばいい感じだった」
「あのとき、おまえ、逃げた」
「……え?」
「前進したなってことだ。今日は誘っても来ないかもしれないと思った」
確かに、半年まえなら避けていたかもしれない。
けれどいまは――
「紘斗のこと、もっと知りたいと思ってるから」
「そう思われるほど、いま隠してることはない」
「ある!」
姫良がすぐさま紘斗の云ったことを否定すると、隣から怪訝な面持ちで見下ろされた。
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