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「紘斗」
そっと呼んでみたけれど反応はなく、紘斗は眠っていた。
商社は世界にまたがっている以上、盆休みなど関係なく、昨日も帰りが遅かったようだし、今朝は今朝で早かったから疲れているのも無理はない。
姫良がいなければ気遣うこともなく、もっと実家でのんびりできたかもしれないのに――
そう思うと、やはり誘ってくれたということに紘斗の気持ちが見えてうれしくなる。
この瞬間の気持ちは姫良の片想いだ。
知らなかったことを話してくれたり、だれかに教えてもらったり、今日いくつもあったその瞬間の片想いは宝物を手にしたような気持ちになれる。
同じ時に同じぶんだけの両想いはどこにもなくて、いつもどちらかに偏っている。
両想いだからではなく、片想いの連鎖があるからふたりでいられる。
そんなことを思った。
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