第11話 ずっと片想い

4/32

162人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「紘斗、わたしが遠野になったときと同じ年だよ」 「ああ」 相づちを打った紘斗は、それまでのおっとりした気配をわずかに変えた。 静かな水面に葉が落ちて波紋が広がった感じだ。 紘斗は東京から福岡へと、姫良がいた場所から遠く隔たっていたのに、同じ時期に同じ――もしくは似たような思いでいた。 不思議な共有感を見いだすのは強引すぎるだろうか。 「偶然?」 「そうとも云う」 紘斗は曖昧な云い方をした。 わざとらしくて、からかっているとも取れる。 「同じことがあるってほっとするかも」 「親父も仕事を休んでちょっと帰ってくるらしい」 紘斗は姫良には応えず、唐突に話題を変えた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

162人が本棚に入れています
本棚に追加