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「紘斗、わたしが遠野になったときと同じ年だよ」
「ああ」
相づちを打った紘斗は、それまでのおっとりした気配をわずかに変えた。
静かな水面に葉が落ちて波紋が広がった感じだ。
紘斗は東京から福岡へと、姫良がいた場所から遠く隔たっていたのに、同じ時期に同じ――もしくは似たような思いでいた。
不思議な共有感を見いだすのは強引すぎるだろうか。
「偶然?」
「そうとも云う」
紘斗は曖昧な云い方をした。
わざとらしくて、からかっているとも取れる。
「同じことがあるってほっとするかも」
「親父も仕事を休んでちょっと帰ってくるらしい」
紘斗は姫良には応えず、唐突に話題を変えた。
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