走馬灯で知った最後の言葉

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 大学を卒業した。  会社に入った。  この頃、彼女は数人いた。 「文句のあるヤツは、おれの前から消えろ」  と、達彦は彼女たちに堂々と言っていた。  達彦のことが嫌になって彼女が離れていっても、また他の女と付き合えばいいだけのことだった。達彦は、女にはまったく不自由しない男だった。  会社に入って二年後に、裕子が入社してきた。  社長の娘だということだった。いわゆる、社長令嬢だった。しかも一人っ子だった。  これだ、と達彦は思った。  会社は、社長のワンマン経営だった。  娘の婿(むこ)になれば、いずれは自分が社長の座に着くことになるはずだった。  女は好きなだけ自由になるので、次は金を手に入れたかった。  社長になろうと思った。
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