走馬灯で知った最後の言葉

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 そのとき付き合っていた女全員と別れた。  社長令嬢と付き合うためには、当然の犠牲だった。  渋った女もいたが、強引に別れた。  女と別れることに、達彦は慣れていた。  どうしても別れたくないと執拗(しつよう)に食らいついてくる女でも、別れさせることのできる技術を、これまでの経験から培(つちか)っていた。中学生のときから別れてきた、たくさんの女との修羅場からつかみ取ったテクニックだった。  しかしこのとき、高橋ミキという、二十代後半の女は半狂乱になって、達彦と別れることを拒(こば)んだ。  涙と鼻水と涎(よだれ)でぐちゃぐちゃになった顔で、ミキは達彦に縋(すが)りついた。  そんなミキを蹴り飛ばし、達彦は機関銃のように言葉をまくしたてて罵倒(ばとう)した。  ミキの心の肉をえぐり、心から噴き出した血液で全身血まみれにさせたみたいに、言葉によってミキのことをズタボロに叩きのめした。 「手こずらせやがって、このクソ女が!」  そう吐き捨てて、達彦はミキの元を去った。
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