走馬灯で知った最後の言葉

6/16
前へ
/16ページ
次へ
「…………」  裕子が何かを口走った。 「えっ」  達彦は、裕子がなんと言ったのか聞き取れなかった。  隣に立つ裕子の顔に視線を向けようとした。  そのときだった。  達彦の背中に、重い何かがぶち当たってきた。  そのまま押されるようにして、力が体に加わる。もつれるようにして、達彦の足が二、三歩、前に踏みだした。  とっさのことで無防備だった達彦は、何も抵抗できないまま、されるがままにホームから線路へと突き落とされた。  なぜ……。  達彦の頭には疑問だけが浮かんだ。  線路に落ちながら、自然と顔が後ろに向いていった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加